―第3部 投機的な性質を持つ上位証券

2012年01月16日

P346 保有・売却の原則


以上、

特権付き債券の選択に際して指針となる基本原則、

について述べてきたが、


それでは、

証券購入後に、

それを保有または売却するときには、

どのような原則で臨むべきであろうか。



まず最初には、

普通株の投資の一環として、
転換証券を購入した場合には、

単なる投資よりも、
大きな利益を狙うべきであろう。


もし、

購入した転換証券が、
100ドルから150ドルに値上がりしたら、

もはや、

転換によるプレミアムは、
この証券を売却する、
主な理由にならないだろう。


保有者の関心は、

利益をさらに大きくするために、
普通株が今後どれだけ上昇するか、

に向かうはずだ。


しかし、

安全な債券の投資という目的で、
この証券を購入したのであれば、

取得価格の、
25〜35%以上の利益を追うことはないだろう。


これを、

逆に言えば、

転換証券の購入で、
本当に成功し続けるためには、

それ以上長くは、
その証券を保有してはならない、

ということである。


たとえ、

長期保有のつもりで、
そうした証券を購入した場合でも、

評価益は、
早めに確定したほうがよい。


以上の検討結果を要約すると、

もうひとつの投資原則が得られる。


それは、

「一般投資家は、
転換社債の転換権を行使すべきでない」

ということである。


転換権の目的は、

チャンスが来たら、
それを行使して、
利益を得ること、

にあるのは言うまでもない。


もし、

その転換社債が急上昇したら、

それを株式に転換すれば、

大きな利益が得られるだろう。


しかし、

その投資家が、
保有する転換社債を、
株式に転換したら、

債券の安全性と、

購入時の大前提であった、
元利の無条件の請求権は、

放棄しなければならない。


株式に転換したあとで、

株価が、
債券の取得価格を、
割り込むようなことになれば、

その投資家は、
利益のみならず、
元本の一部も失うことになるのである。


さらに、

事態はそれだけにとどまらず、

その投資家は、
債券投資家から、
株式投機家に変身する危険性もはらんでいる。


そうなれば、

優良な転換社債にも、
それなりのリスクがあるというのに、

投機の世界ともなれば、

無用心な者には、
恐ろしいワナが待ち受けているかもしれない。


こうした危険を避けるためにも、

投資家は、

保守的な立場を、
しっかり堅持しなければならない。


そのためには、

もし、

保有債券の価格が、

投資の範囲を超えて上昇したら、

迷わずそれを売却する。


その場合に、
最も大切なことは、

売却した債券の価格がさらに上がっても、
けっして悔しがってはならない、

ということである。


その証券が、

投機的な価格帯に入ったら、

それは、

もはや、

自分とは関係のない別の世界の出来事である、


と割り切るべきである。


投機的な証券の行き先などは、

だれにも分からないからである。



投資家が、

われわれの主張する、

こうしたスタンスを守るならば、


転換社債などを購入するのは、

投機のために普通株を取得するときと同じような、
明確な目的を持つ場合に限られるだろう。


(転換社債を購入するひとつの目的は、

同社債を購入すると同時に、

転換パリティよりも高い水準で株式を売却する、

という、

いわゆる裁定取引を行うことにある。)



相場環境がよいときには、

特権付き証券を購入して、
できるだけ利益を確定しながら、

大きなプレミアムを失わないように、
新しい証券に乗り換えるのもよいだろう。


具体的に言えば、

100ドルで購入した証券を、
125ドルで売却したら、

額面付近で購入できる、
別の有利な転換証券に乗り換えるのである。


もっとも、

こうしたチャンスは、
そういつでもあるわけではなく、

また、

すべての投資家が、
こんなことをできる腕を持っているわけではない。


魅力的な転換証券の多くは、

強気相場のときよりも、

それに続く、

1933年のような、
超弱気相場のときに現れる、

というのが現実であろう。


1926〜29年には、

さまざまな転換証券が続々と登場したが、

その多くは劣悪なものだった。


それに続く、
1931〜33年には、

投資熱が極端に冷え込んで、
安全志向が高まり、

新規発行の債券には、
ほとんど転換権などは付いていなかった。


しかし、

相場の振り子が戻ってくれば、

安全な債券の販売を促進するために、
また、
何らかの利益参加権が付けられるようになるだろう。


そうなれば、

1918年に発行された、
ATTの6%債のような掘り出し物が、
抜け目のない投資家の前に現れるはずである。










参考♪



a_rise at 03:48|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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