―第4部 普通株の投資基準
2012年04月20日
P446 普通株投資に対する投機の影響
しかし、
多くの投資家が、
株式投機のほうに足を踏み外さないで、
こうした投資スタンスを、
しっかりと守ることができるのか、
という点については、
あまり確信が持てない。
その理由のひとつは、
普通株の投資と投機の区別が、
極めてあいまいであるため、
投資家が、
この2つをはっきりと区別することが、
できないからである。
投資を、
債券や優良な優先株に限定すれば、
その区別も簡単であろう。
債券の投資家と普通株の投機家は、
それぞれのスタンスがまったく異なるため、
その利益と損失の出所も、
まったく違うからである。
しかし、
投資家が、
投機家と同じようなスタンスを取るならば、
投資と投機の区別は、
単に、
その人の考え方だけの問題となり、
この2つは、
まったく区別できなくなってしまう。
特に、
自分の持ち株が、
投機的な動きをするようになったときには、
投資家が、
投機の影響から完全に免れることは、
ほとんど不可能であろう。
1926年以前には、
「投資的な普通株」と「投機的な普通株」の区別は、
かなりはっきりしていた。
投資的な普通株は、
一定の配当率を反映して、
狭い範囲の往来相場を繰り返していた。
以下の表に見られる、
アチソン・トピーカ鉄道株の、
1916〜25年の値動きなどは、
その典型である。
アチソン・トピーカ鉄道
年
普通株価(ドル)
1株利益(ドル)
1株配当(ドル)
1916
109-100
14.74
6
1917
108-75
14.50
6
1918
100-81
10.59
6
1919
104-81
15.41
6
1920
90-76
12.54
6
1921
94-76
14.69
6
1922
109-92
12.41
6
1923
105-94
15.48
6
1924
121-97
15.47
6
1925
141-116
17.19
7
このように、
普通株の投資家が手掛ける銘柄は、
投機家が売買する銘柄とは、
まったく異なっており、
それゆえに、
保守的な投資スタンスを守ることができるのである。
新しい時代の特徴のひとつは、
以前には投資適格ランクにあった銘柄を、
投機的な銘柄にしたことである。
その結果、
証券界のあらゆる人々の精神構造は完全にマヒし、
その後も、
長期にわたって、
そうした混乱の影響が続いたのである。
典型的な普通株の投資家が、
今後も、
こうした投機の影響を免れることは、
1927年以前よりも、
はるかに難しくなるだろう。
参考♪