―第5部 損益計算書の数字の操作

2013年03月08日

P521 事例


ウエスタン・パシフィック・レールロード・コーポレーションは、

1925年に、

1株当たり、
7.56ドルの優先配当と、
5ドルの普通配当を支払った。


同社の決算報告によれば、

同年の当期利益は、
支払い配当をわずかに上回る水準だった。


しかし、

その当期利益の大半は、
営業子会社である、
ウエスタン・パシフィック・レールロード・カンパニーから受け取った、
445万ドルの配当金だった。


ところが、

同年のこの子会社の利益は、
わずか245万ドルにすぎなかった。


さらに、

同社の累積剰余金も、
親会社に配当金として支払えるほどのものではなかった。



親会社の利益を計上するために、

まず、

親会社が、
この営業子会社に150万ドルを贈与し、

その同じ金額を、
子会社から親会社に配当金として支払う、

という形がとられていた。


親会社は、
この贈与分を剰余金から引き出す一方、

子会社から配当という形で受け取ったその金額を、
当期利益に計上していたのである。



こうした回りくどい方法を使って、

実際には、
わずか1株2ドルしかない普通株の利益を、
5ドルにまで水増ししていたのである。



一方、

ニューヨーク・シカゴ鉄道は、

1929年に、

ペレ・マーケット鉄道の保有株式を、
やはり、
同じ系列会社のチェサピーク鉄道に売却し、

その売却益の1,066万5,000ドルを、
利益剰余金に繰り入れた。


同社は、
翌年に利益を増やす必要があったため、

この分を剰余金から引き出して、
子会社のチェサピーク鉄道に返還し、

改めて、

「配当金」という形で、
300万ドルを受け取り、
1930年の利益に計上していた。


翌年も、

こうした形で受け取った配当金の210万ドルを、
利益に含めていた。



こうした方法をとったのは、

既発債を、
投資信託の投資適格債に含めておくために、
当期利益を増やす必要があったからである。


しかし、

こうした会計操作は、
ほかの悪しき会計慣行と同じように、

投資家を混乱させるばかりでなく、

インサイダーの不正な利益をもたらす原因ともなる。





参考♪



a_rise at 10:41|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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